Shaukat KhanとVilayat Khan

私のタブラの先生は、言ってしまえばバングラデシュ人の中の「インド古典音楽オタク」のような人で、まあそれはインド古典音楽が大好きだからで、しかもそれだけじゃなくてタブラもとっても上手だから(タブラプレイヤーだから当たり前ね)、「オタク」というのは違うのかもしれないけど、インド古典音楽の話をしだすとイキイキしてるから、敬意をこめて「オタク」と呼びます。

で、昨日のレッスン。話は私のドーバーレーン報告から始まって、「Sabir Khanのデレデレはヤバイよね」だとか「Partho Saratiは2・3年前にダッカに来たよ」とかの話をしてたんだけど、途中レッスンをはさみ(そう、タブラレッスンだからね)、その後お茶を飲みながら話は、先生のグルジのことになったのでした。

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グルジShaukat Khanは、シタール奏者Vilayat Khanと演奏したことが何度もあった。でも、2人の間に何か問題がおきて、一緒に演奏することはある時期からなくなった。でもその後、グルジの息子のタブラ奏者Aslaam KhanがVilayat Khanの伴奏者としてツアーなどに同行するようになった。

ただし、父Shaukatは息子Aslaamに1つのことを忠告していた。「このutan(タブラのコンポジションの1つ)は、とっても複雑で綺麗な形をしている。しかし、このutanだけは、Vilayatの前で叩いてはいけない」。そして、息子Aslaamは父の言葉を守り、そのutanだけは叩かないようにしていた。

ところがある時、どうしてかそれを忘れてしまい、Vilayatの前で叩くなと言われていたutanを叩いてしまった。すると、Vilayatは「今のは何だ?もう一度叩いてくれ」と言い、Aslaamはもう一度叩いた。
結局、AslaamはVilayatに頼まれて、3回そのutanを叩いた。すると、Vilayatは、こう言った「明日のコンサートで、同じフレーズをシタールで弾くよ」。

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ははは。私、この手の話が大好きです。インド古典音楽に関わる偉人の話。この話は、解説してしまえば、「ShaukatはVilayatの才能を十分に分かってた。だから自分のお気に入りのutanをVilayatの前で披露すれば、彼はそのリズムを理解してしまうことも分かってた。だけど、Vilayatにはそのutanを渡したくなかったから、息子Aslaamに叩くな、と言ってた。けど、最終的にはShaukatが恐れてた通り、Vilayatはそのリズムをすぐに理解して自分のものにしてしまった」ってこと。

この他、ShaukatjiとShahid Parvezの話、Shaukatjiがsare panch(5.5)のターラでteentaal(16)のカイダを叩いた話、などなど、昨日は話が盛り上がったのでした。

「インド古典音楽偉人伝」みたいな本、ないのかしらね。真偽のほどはおいといて、絶対に面白いはず。

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