Aさんの事。
そもそもの始まりは、私がバンガロールに住んでいた頃、誤解によるクレームのメールが突然Aさんから来たことだった。
その後、私がAさんの住んでいる都市へ引越した後に初めて会って、共通の話題が多くてたくさんの事を話すようになって、その後も顔を合わせると話すようになった。
バンガロールで私の歌の先生の伴奏を良くしていたKatti jiがAさんのパートナーのハルモニウムの先生で、AさんはKatti jiから歌を習っていた。
そして、Aさんと会うと歌の事を話すことも多くて、自宅で歌の練習すると子どもに発音を直されるんだよね、とか、大気汚染で喉をやられて練習が大変、とか言って笑ってた。
私の歌の先生の事を知っているのはその都市の知り合いでAさんだけだったし、私もAさんの先生のKatti jiを良く知っていて2人ともインド音楽が大好きだったから、すごく近い存在に思ってた。でも話したのは音楽の事、それも今思えば少しだけで、他の事ほとんど話してないな。もっとAさん自身のこと聞けば良かったな。もっと知りたかったな。
Bさんの事。
コルカタでなんの流れか全く覚えてないけど、Bさんが下宿していた家のキッチンで2人でパスタを作って食べた、というのが一番覚えてる。
別の日、その家でインド古典音楽を習いに来ていた他の日本人の友人たちやインド人タブラ奏者の知人とかが集まって夕食を皆で食べた時に、Bさんのベンガル語勉強メモに「大きな男性器」「もっと大きな男性器」「すごく大きな男性器」のベンガル語がメモしてあって、皆で大笑いした。(ろくでもないな!)
そしてコルカタの路上でハグして別れたのが直接会った最後で、その後に「バングラデシュに今度行くよ」とメールで連絡があって私が以前住んでた頃の話とかして、「今コックスバザールだよ」っていうのが最後のメール。
Cさんの事。
すごく前。20年前ぐらい。
私がヴァラナシから荷物を船便で送ったのだけど、日本の自宅に届いたものはボロボロで一回開けた形跡があって、中身のものが何個か無くなってた。(サリーとか、ザキール・フセインのカセットテープ(!)とか。)
そして、なぜか知らない人の名前の入った送付状が紛れ込んでいて、「私の荷物とこの人の荷物が同時に漁られて、犯人は適当に荷物を直したんだろうな」って思ってた。
その数年後、コンサート会場だったか誰かの家だったか忘れちゃったけど、その送付状にあった名前の人と遭遇。それがCさん。
Cさんに荷物とCさんの名前の送付状の話をすると、同じ時期にヴァラナシから荷物を送り、同じように中身を漁られていたことが判明。それをCさんはすごく素敵な笑顔で楽しそうに話してたな。
Aさん、Bさん、Cさんは、もう会うことはできなくて、お葬式へも行かず、実家の場所も知らず(Aさん、Bさんは日本で会ったことすらない)、思い出を誰かと長時間語り合う事もできず、ただ自分の中にあるその思い出だけが行き場を失ってそのまんま。
その思い出は私1人が大事に持っていれば良いのだけど、自分だけが持っているのが勿体なく感じるのと、「誰でもいいから、聞いて!」とも思ってしまって、ここに書いてみました。
Aさん、Bさん、Cさん、いま会ったら、何を話そうかな。